柿葺落四月大歌舞伎 第三部 [着物で歌舞伎]
近江源氏先陣館
一、盛綱陣屋(もりつなじんや)
佐々木盛綱 仁左衛門
篝火 時 蔵
早瀬 芝 雀
伊吹藤太 翫 雀
信楽太郎 橋之助
竹下孫八 進之介
四天王 男女蔵
同 亀三郎
同 亀 寿
同 宗之助
高綱一子小四郎 金太郎
盛綱一子小三郎 藤間大河
古郡新左衛門 錦 吾
微妙 東 蔵
北條時政 我 當
和田兵衛秀盛 吉右衛門
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
武蔵坊弁慶 幸四郎
源義経 梅 玉
亀井六郎 染五郎
片岡八郎 松 緑
駿河次郎 勘九郎
太刀持音若 玉太郎
常陸坊海尊 左團次
富樫左衛門 菊五郎
一、盛綱陣屋
仁左さまの盛綱は2010年に演舞場で観たんですけど、この時の舞台は歌舞伎座休業中に観た演目の中では最もダントツに感動した舞台でした。
『盛綱陣屋』は大坂冬の陣で兄弟でありながら敵味方に分かれて戦った、真田信之・幸村を佐々木盛綱・高綱兄弟に置き換えて書かれた作品で歌舞伎三大首実検(どんだけ好きなんだ首実検が、笑)のひとつ。盛綱が主君の前で弟・高綱の首実検をする場面が最大の見せ場です。
まずは軍使として訪れた和田兵衛秀盛演を演じる吉右衛門と仁左さまとの対面。吉右衛門の肝が据わった大きな芝居と仁左さまの繊細な演技の対比がこの場面を際立たせます。二人の間に流れる緊張感に見ている方もドキドキ。
仁左さまの台詞回し、そして腕を上げたり、足を踏み出したり、体を傾けたり、といったひとつひとつの仕草全てが盛綱という人物を物語り、いつものように音楽にのって美しく表現される瞬間を観る喜び!前回観た時よりもそれは更にブラッシュアップされて完成度が高まっていたように感じました。
一方で金太郎君に小四郎役は少し荷が重かったかなーと感じました。前回見た小四郎役はどこかの劇団の子だったんですが、このが凄く上手で堂々とした芝居だったもんで、型を追うだけで精一杯、台詞も息が続かない金太郎君を見ているとちょっと舞台から心が離れてしまう部分はありましたね。まだ7歳くらいなのかな。大役なので大変だと思うけど頑張って欲しいです。
それでもやはり仁左さまが登場すると舞台は別次元に入ります。最後の場は竹本喜太夫の語りと鶴澤宏太郎の三味線でこの二人と仁左さまの組み合わせがひとつのアートを作り出しているというかビッタリはまってエキサイティング!
以前のインタビューで仁左さまは首実検の演じ方について「歌舞伎は理屈だけではいきません。リアル、リアルに押すと矛盾やエゴも目立つ」と答えていますが、彼の盛綱はそういった意味でまさに体の表現のみによって我々の心にダイレクトに訴えかけるという、究極の形にたどり着きつつあるのでは。
ラスト、再び吉右衛門が登場すると舞台が華やかに輝き、戦場での再会を約束する盛綱と和田兵衛の姿は実に立派でまぶしいくらいでした。
二、勧進帳
今まで色々な組み合わせの弁慶・富樫・義経を見てきましたが、この演目はジャズのセッションみたいなもので、メンバーによって印象が本当に大きく変わる演目です。
その中で幸四郎の弁慶というのはどーも色々と小芝居が多いので落ち着かないというか、1人で盛り上がってる感じがあまり好みではなく、今回もそこんところは相変わらずでしたがしかし菊五郎の富樫がまた堂々としていて素晴らしく、品のある梅玉の義経といった組み合わせが良いバランスを生んでいました。特に弁慶最後の舞踊は今迄みた弁慶の中でも力強くて美しく、その真剣さには心打たれましたね。
けど、そんなことよりなにより今回は染五郎・勘九郎・松緑という若いイケメン揃いの四天王に目が釘付けですよ!(ダンディ・左団次も勿論すてきですけどね)殆ど台詞なんてないんだけど、義経の為の死ねと言われたら何のためらいもなく死ぬ覚悟を感じる位の気迫と緊張感がビシビシ伝えってきて萌えました。
これは女性陣文句無く全員一致の意見。イケメンというだけでなく全員しっかりとした芸を持っていますからね。カッコ良きゃいいってもんじゃない。そこが重要です。
今月の舞台を見て思いましたが、これだけの役者が揃うだけでも豪華なのですが、その上ベテランの大役者たちでさえ気合いの入り方が普段と全く違う。「混んでて値段の高い柿葺落公演を慌てて観る必要ないじゃん。」と思っている方がいたらそれは違うかも。チケットの値段には不満がありますが、でもこの芝居は今しか観られないものだと思います。
さて、第三部の席は三階A席6,000円。ま、B席から移ってくると近く感じますね。
この日はまだまだおめでたい感じに飛び柄の小紋と菱模様の袋帯。天気が悪かったので草履がカレンブロッソなのが、写真で見ると不格好だなぁ。ワンピースにスニーカーを履いて来てしまったような感じ。
4月末だというのに随分寒い日だったので祖母のものだった道行を着ました。真っ黒に地紋なので喪服用かと思ってたんだけど、家紋が入っていなければ普段使いも大丈夫と呉服屋さんに言われたので初お目見え。
芝居の後はいつものヌガに滑り込みで閉店ギリギリまで粘って1時間一本勝負。ここで来月のチケット配付の儀。飛び交う万札、笑
更にもう一杯飲める所を探して彷徨った挙げ句偶然到着したのが老舗バー「BAR SUZUKI」。
ここは25年近く前歌舞伎を見始めたころ友人と芝居の後度々行ったバーだったのだ!懐かしい。あまりにも懐かしくて泣きそうになりましたよ。
が、一杯飲んだだけで終電めがけて激走。次回はもっとゆっくり味わいたいです。
一、盛綱陣屋(もりつなじんや)
佐々木盛綱 仁左衛門
篝火 時 蔵
早瀬 芝 雀
伊吹藤太 翫 雀
信楽太郎 橋之助
竹下孫八 進之介
四天王 男女蔵
同 亀三郎
同 亀 寿
同 宗之助
高綱一子小四郎 金太郎
盛綱一子小三郎 藤間大河
古郡新左衛門 錦 吾
微妙 東 蔵
北條時政 我 當
和田兵衛秀盛 吉右衛門
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
武蔵坊弁慶 幸四郎
源義経 梅 玉
亀井六郎 染五郎
片岡八郎 松 緑
駿河次郎 勘九郎
太刀持音若 玉太郎
常陸坊海尊 左團次
富樫左衛門 菊五郎
一、盛綱陣屋
仁左さまの盛綱は2010年に演舞場で観たんですけど、この時の舞台は歌舞伎座休業中に観た演目の中では最もダントツに感動した舞台でした。
『盛綱陣屋』は大坂冬の陣で兄弟でありながら敵味方に分かれて戦った、真田信之・幸村を佐々木盛綱・高綱兄弟に置き換えて書かれた作品で歌舞伎三大首実検(どんだけ好きなんだ首実検が、笑)のひとつ。盛綱が主君の前で弟・高綱の首実検をする場面が最大の見せ場です。
まずは軍使として訪れた和田兵衛秀盛演を演じる吉右衛門と仁左さまとの対面。吉右衛門の肝が据わった大きな芝居と仁左さまの繊細な演技の対比がこの場面を際立たせます。二人の間に流れる緊張感に見ている方もドキドキ。
仁左さまの台詞回し、そして腕を上げたり、足を踏み出したり、体を傾けたり、といったひとつひとつの仕草全てが盛綱という人物を物語り、いつものように音楽にのって美しく表現される瞬間を観る喜び!前回観た時よりもそれは更にブラッシュアップされて完成度が高まっていたように感じました。
一方で金太郎君に小四郎役は少し荷が重かったかなーと感じました。前回見た小四郎役はどこかの劇団の子だったんですが、このが凄く上手で堂々とした芝居だったもんで、型を追うだけで精一杯、台詞も息が続かない金太郎君を見ているとちょっと舞台から心が離れてしまう部分はありましたね。まだ7歳くらいなのかな。大役なので大変だと思うけど頑張って欲しいです。
それでもやはり仁左さまが登場すると舞台は別次元に入ります。最後の場は竹本喜太夫の語りと鶴澤宏太郎の三味線でこの二人と仁左さまの組み合わせがひとつのアートを作り出しているというかビッタリはまってエキサイティング!
以前のインタビューで仁左さまは首実検の演じ方について「歌舞伎は理屈だけではいきません。リアル、リアルに押すと矛盾やエゴも目立つ」と答えていますが、彼の盛綱はそういった意味でまさに体の表現のみによって我々の心にダイレクトに訴えかけるという、究極の形にたどり着きつつあるのでは。
ラスト、再び吉右衛門が登場すると舞台が華やかに輝き、戦場での再会を約束する盛綱と和田兵衛の姿は実に立派でまぶしいくらいでした。
二、勧進帳
今まで色々な組み合わせの弁慶・富樫・義経を見てきましたが、この演目はジャズのセッションみたいなもので、メンバーによって印象が本当に大きく変わる演目です。
その中で幸四郎の弁慶というのはどーも色々と小芝居が多いので落ち着かないというか、1人で盛り上がってる感じがあまり好みではなく、今回もそこんところは相変わらずでしたがしかし菊五郎の富樫がまた堂々としていて素晴らしく、品のある梅玉の義経といった組み合わせが良いバランスを生んでいました。特に弁慶最後の舞踊は今迄みた弁慶の中でも力強くて美しく、その真剣さには心打たれましたね。
けど、そんなことよりなにより今回は染五郎・勘九郎・松緑という若いイケメン揃いの四天王に目が釘付けですよ!(ダンディ・左団次も勿論すてきですけどね)殆ど台詞なんてないんだけど、義経の為の死ねと言われたら何のためらいもなく死ぬ覚悟を感じる位の気迫と緊張感がビシビシ伝えってきて萌えました。
これは女性陣文句無く全員一致の意見。イケメンというだけでなく全員しっかりとした芸を持っていますからね。カッコ良きゃいいってもんじゃない。そこが重要です。
今月の舞台を見て思いましたが、これだけの役者が揃うだけでも豪華なのですが、その上ベテランの大役者たちでさえ気合いの入り方が普段と全く違う。「混んでて値段の高い柿葺落公演を慌てて観る必要ないじゃん。」と思っている方がいたらそれは違うかも。チケットの値段には不満がありますが、でもこの芝居は今しか観られないものだと思います。
さて、第三部の席は三階A席6,000円。ま、B席から移ってくると近く感じますね。
この日はまだまだおめでたい感じに飛び柄の小紋と菱模様の袋帯。天気が悪かったので草履がカレンブロッソなのが、写真で見ると不格好だなぁ。ワンピースにスニーカーを履いて来てしまったような感じ。
4月末だというのに随分寒い日だったので祖母のものだった道行を着ました。真っ黒に地紋なので喪服用かと思ってたんだけど、家紋が入っていなければ普段使いも大丈夫と呉服屋さんに言われたので初お目見え。
芝居の後はいつものヌガに滑り込みで閉店ギリギリまで粘って1時間一本勝負。ここで来月のチケット配付の儀。飛び交う万札、笑
更にもう一杯飲める所を探して彷徨った挙げ句偶然到着したのが老舗バー「BAR SUZUKI」。
ここは25年近く前歌舞伎を見始めたころ友人と芝居の後度々行ったバーだったのだ!懐かしい。あまりにも懐かしくて泣きそうになりましたよ。
が、一杯飲んだだけで終電めがけて激走。次回はもっとゆっくり味わいたいです。
黒猫さんのこの感想、臨場感ありすぎ。
我慢しきれず、本日もう一回いきました。
でも、微妙と小四郎の場面は爆睡。。。
by のの吉 (2013-04-28 23:38)
>のの吉さん
もう一度行かれたとは羨ましいです!
微妙と小四郎は私も寝ました。。。
by 黒猫 (2013-04-29 15:04)
> チケットの値段には不満がありますが、でもこの芝居は今しか観られないものだと思います。
そうなの、そうなのよね~。そしてその先に待つのは「杮落し貧乏」。
いやしかし、2010年にご一緒した「盛綱陣屋」、覚えていなくて面目ない(^^;)
by はつき (2013-05-10 11:58)
>はつきさん
こけらおとし貧乏!まさに!さよなら公演貧乏に続く恐ろしい罠ですね、笑。
いえいえ、「盛綱陣屋」の時ははつきさんハードスケジュールでしたもん!あと、首実検は色々あるんで混乱しますよね。
by 黒猫 (2013-05-11 15:06)